フルートの伴奏について
- Yoshie Ueno
- 2019年5月3日
- 読了時間: 4分

今回はピアニストさんからご質問をいただきました。フルートとの演奏は、確かに少し難しい面があるかと思います。私はピアノの専門家ではありませんが、数多くのアンサンブルにおいて様々な失敗を含む試行錯誤をしてきた経験があるので、少しでも参考になればと思い、お答えさせていただきます。
必要なのは変化のある演奏
ずっとソフトペダルを踏んだり蓋を閉めたりすることをピアニストに要求される方が多いのは、私も実感しています。確かに、フルートはダイナミックレンジ(音量の幅)が大きな楽器ではありませんので、ピアノがソロ曲のような大きさでそのまま弾いてしまうと、フルートはかき消されてしまうこともあります。そのため、学生さんの試験やコンクールなどで「ピアノの音に消されてフルートが聞こえない」ということも時折あるので、それを手っ取り早く回避するという意味では仕方ないのかもしれません。
しかし、ピアノのソフトペダルを踏みっぱなしにしたり、蓋を閉めたまま演奏したりすると、音色の変化が付きにくく、単調な演奏になってしまうと私は感じます。きっと質問者さんも感覚的に「変だな」と感じてらっしゃるのではないでしょうか。
やはり、最終的に向かいたいのはフルート奏者とピアニストが同じベクトルで音楽をしあう演奏だと思います。ずっとピアノがフルートの裏に回るような演奏は、作曲者の本来の意図にも沿わないことがほとんどです。
以下で、私が試行錯誤を経て考えた方法をご紹介しますので、少しでも参考にしていただけたら嬉しいです。
フルート奏者からピアニストへお伝えしたいこと
フルートの音は、高音が飛びやすい一方で、五線内の音域(特に低音域)は音量があまり出ないという特性があります。フルートパートが五線より上にいる場合はしっかり弾いていただいても問題ありませんが、五線内にいる時はできるだけ音量に注意して弾いていただくと良いかと思います。 また、厄介なのは、フルートの音は近くだと鳴って聞こえるけれど会場によっては飛んでいないこともあるということです。できれば、その場で鳴っている音よりも、ホールの端にどのくらい飛んでいるかという意識を常に持っておいていただけると、よりフルートという楽器のクセを実感しながら弾いていただけるように思います。
ピアノソロの曲を弾かれるときは、右手のメロディーに意識を置いて弾くことが多いかと思いますが、私は、アンサンブル時に肝となるのはピアニストの左手だと思っています。ピアノの右手の音域はフルートと音域が重なることが多く、相当柔らかい音色で弾いていただかないとフルートを消してしまう危険性を秘めています。 その代わり、左手が担当する低音部(へ音記号の音域)はフルートの音を直接的に消してしまうことも少ないですし、和声進行の大切なベースラインを担っていますので、音楽全体を支える意識を持って演奏していただくのが良いと思います。 原則として右手の和音は極力抑え(対旋律など、出してほしい箇所もたまにありますが)、左手は音楽的に遠慮しないということです。ピアノソロの曲を弾かれる時とは少し違う弾き方になると思うので、頭の片隅で意識していただければと思います。
どの楽器のアンサンブルでも言えることですが、相手のパートがしっかり頭に入っていて、それを聞きながら演奏しているかどうかは、聴いてる方にも伝わってしまいます。なんとなく知っているではなく、お互いがお互いのパートを口で正確に歌えるような状態で演奏できれば、自然と音量のバランスもとれるように思います。 ご質問にあった、難所でテンポが速くなるという問題も、フルートのパートを自分のパートのように頭に入れることで解決するかもしれません。個人練習の時に、一度、フルートパートを大きな声で歌いながら弾いてみてはいかがでしょうか。頭の中で流すよりも、大きな声で歌うとブレスを取る感覚も知れるので良いと思います。
ピアニストの方に聞けばまだまだ秘策があるかもしれませんが、アンサンブルさせていただくフルート奏者の一意見として書いてみました。フルートは空気の振動で音を出しているので、音量的に頼りなく、たくさんの共演者に気を使っていただき申し訳ない限りですが、上記の方法を参考にしていただき、フルートとのアンサンブルを楽しんでいただけると幸いです。
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